研究調査ピクトリアル /  ダムとその周辺を訪ねる
 戦後、数多くの発電用ダムが建設され、高度経済成長を支えた。水力発電では水頭が重視されるため、高堰堤となるのは必然である。 切り立ったV字の峡谷に建設された100mを超えるダムの姿は威容を示しており、佐久間、黒部、奥只見ダムなどはよく知られている。 今日、これらのダムとその周辺は観光地になっていることが多いが、よく調べてみると、観光のために設置された施設の多くは、 工事に関連した土地にある。
 例えば、黒部ダムを訪れる際の電気バス(2019年4月、トロリーバスから転換)扇沢発着場は、骨材貯蔵所があった場所であり、 電気バスが走行するのは、破砕帯突破の難工事で知られた関電トンネル、すなわち資材搬送用のトンネルであった。 また、ダム脇のレストハウスの上部には、ケーブルクレーン走行路の基礎が今でも残っている。
 ダム技術史の研究には、文献(工事記録、技術報告、社史など)や建設記録映像などの検討、土木技術者へのヒアリングなどが欠かせないが、 実際にダムを訪れ、資材の運搬、コンクリート製造、コンクリート打設などのオペレーションをイメージすることも重要である。 ダム建設の要諦は資材とズリの効率的な運搬作業にある。(会員・馬渕浩一)


  左から、黒部ダム、扇沢バス発着所


  左から、関電トンネルに向かうトロリーバス、ケーブルクレーン走行路基礎